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空き家の3,000万円控除について通達が公表されました

掲載日:2016/9/16

今年4月からスタートし実務でも非常に関心の高い「空き家の3,000万円特別控除」の規定について、国税庁よりその取扱いに関する通達が公表されました。通達の内容は国税庁ホームページ(https://www.rosenka.nta.go.jp/)でも確認できますが、今月のニュースレターでは、通達の内容の中で重要なポイントについて解説したいと思います。 なお「空き家の3,000万控除」の制度の概要はニュースレターvol48をご参照下さい。また、このニュースレターの内容について、ご質問がある方は原稿を作成した石井まで直接ご連絡下さい。


1. 対象となる家屋の範囲(措通35−10)

①被相続人の居住の用に供されている家屋に該当するかどうかは相続開始直前の現況に基づいて判断する。

②被相続人の居住の用に供されていた家屋が複数の構築物からなる場合には、主として居住の用に供していたと認められる一の建築物のみが対象となる。

ポイント

通達では、居住用の判断は相続開始の直前の現況に基づき措通31の3−2に準じて取り扱うとされております。措通31の3−2は従来の3,000万円特別控除の居住用の判定を指しますので、居住用の判断は従来の判断と基本的に変更はありません。ただし、従来の3,000万円特別控除は売却前 3 年以内に居住用の定義を満たせば良いのに対し、空き家の3,000万控除は相続発生時にピンポイントで定義を満たさなければいけない分、要件的には厳しくなります。まだ、申告実績が無く判断の難しい部分がありますが、まずは、被相続人が住民票を自宅に残していたのかどうかがポイントとなりそうです。また、自宅敷地上に母屋、離れ、倉庫など複数の構築物がある場合、母屋のみが対象となります。

<認められそうなケース> 相続発生時に病気の治療のため病院等に入院していたが、住民票は自宅に残している場合

<認められなそうなケース> 相続発生の数年前に介護上の理由により老人ホームに入所し、住民票も移している場合

~参考:措通31の3−2(居住用家屋の範囲)~

31の3−2:措置法第 31条の3第2項に規定する「その居住の用に供している家屋」とは、その者が生活の拠点として利用している家屋(一時的な利用を目的とする家屋を除く。)をいい、これに該当するかどうかは、その者及び配偶者等(社会通念に照らしその者と同居することが通常であると認められる配偶者その他の者をいう。以下この項において同じ。)の日常生活の状況、その家屋への入居目的、その家屋の構造及び設備の状況その他の事情を総合勘案して判定する。この場合、この判定に当たっては、次の点に留意する。

(1)転勤、転地療養等の事情のため、配偶者等と離れ単身で他に起居している場合であっても、当該事情が解消したときは当該配偶者等と起居を共にすることとなると認められるときは、当該配偶者等が居住の用に供している家屋は、その者にとっても、その居住のように供している家屋に該当する。

(注)これにより、その者が、その居住の用に供している家屋を2以上所有することとなる場合には、措置法令第20条の3第2項の規定により、その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋のみが、措置法第31条の3第1項の規定の対象となる家屋に該当することに留意する。

(2)次に掲げるような家屋は、その居住の用に供している家屋には該当しない。

イ 措置法第31条の3第1項の規定の適用を受けるためのみの目的で入居したと認められる家屋、その居住の用に供するための家屋の新築期間中だけの仮住まいである家屋その他一時的な目的で入居したと認められる家屋

(注)譲渡した家屋に居住していた期間が短期間であっても、当該家屋への入居目的が一時的なものでない場合には、当該家屋は上記に掲げる家屋には該当しない。

ロ 主として趣味、娯楽又は保養の用に供する目的で有する家屋

2.1億円の判定(措通 35−20)

①この特例の適用要件である譲渡対価の額1億円の判定は、最終的に被相続人の居住用家屋及び土地を取得した全ての相続人の譲渡対価の合計額で行います。また、相続人が相続前にすでに所有していた部分の譲渡対価も含めて判定されます。ただし、相続人が相続前にすでに所有していた部分の譲渡対価についてはこの特例の適用は受けられません。

②この特例は、被相続人の居住用家屋と土地を両方取得しないと適用が受けられません。ただし、1億円の判定については、相続で家屋・土地しか取得していない相続人が行った譲渡対価の額も含めて行います。

③居住用家屋に店舗や賃貸住宅等がある場合、店舗や賃貸住宅に対応する譲渡対価は当然、この特例は受けられませんが、1億円の判定については含めて行います。

④相続で被相続人の居住用家屋又は土地を取得していない相続人が、相続前に持分を一部所有していた場合の、その部分の譲渡対価については1億円の判定から除外することができます。

ポイント

1.この特例は譲渡対価が1億円を超えると適用を受けられません。この1億円の判定は、被相続人の居住用家屋及び土地を取得した全ての相続人の譲渡対価の額で判定します。例えば、子供 3人が1/3ずつ相続取得し、総額1.5億で譲渡した場合、1人当たりは5,000万円ですが譲渡対価の額の合計が1億円を超えますので、3人ともこの特例の適用が受けられなくなります。

2.この譲渡対価の額には、相続で被相続人の居住用家屋及び土地を取得した相続人が相続前に所有していた部分の譲渡対価の額も含まれます。例えば、母と子供で1/2ずつ所有していた母の自宅を、母が亡くなり、相続で子供が母の持分を引き継いで1.2億円で譲渡した場合、子供が元々所有していた部分の譲渡対価も含めて1億円の判定を行うため、適用できません。

3.自宅が店舗併用住宅や賃貸併用住宅の場合、店舗や賃貸部分の譲渡対価も含めて 1 億円の判定を行います。また、自宅の敷地上に母屋と離れがある場合には、母屋の譲渡対価が 1 億円かどうかで判定を行います。例えば、母屋と離れの面積比が 2:1の利用状況の不動産を 1.2億で譲渡した場合、母屋に対応する譲渡対価は8,000万円(1.2億×2/3)となるので、適用が受けられます。


3.その他、実務で気をつけたいポイント

①適用対象者ごとに3,000万円控除可能
この特例は、適用対象者1人当たり3,000万円まで控除を受けることが可能です。例えば、9,000万円の対象不動産を相続人3人で取得し譲渡をすれば、3人とも適用できるため、譲渡所得税がかからない形になります。

②一次相続時に相続登記が行われないまま二次相続が生じた場合
父が数年前に亡くなり、その後母が1人で住んでいた自宅について、母が亡くなり相続人である子供が引き継いで譲渡する場合、自宅の名義が父名義のままになっているケースがあります。その際、父から直接子供に相続取得させて譲渡すると、被相続人が 1人で住んでいる居住用不動産を取得し一定期間内に譲渡するという要件を満たさなくなるため適用が受けらません。この場合には、諸費用がかかっても、一度父から母に相続取得させた上で、子供に引き継がせる必要があります。ただし、母の相続税の問題もありますので、複雑なケースは税理士に確認した方が無難かもしれません。

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このコラムの著者 石井 力(いしい ちから)

執筆者 石井 力(いしい ちから)

税理士:石井 力(いしい ちから)

若さと行動力を武器に、与えられたチャンスを着実に生かして、多くのお客様から頼られる存在になれるよう努めてまいります。

得意分野:不動産購入・税金対策

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