2004 Tokyo City Tax Accountant Firms All Right Reserved
来年の確定申告に向けて、今年、不動産の譲渡を行われた方からの税務相談が増えてきました。今回は最近公表された国税不服審判所の裁決事例の中から、居住用の特例に関するものを取り上げ、適用のポイント等を考えてみたいと思います。
過去に住民票を置いたことのない土地家屋について居住用の特例(いわゆる居住用の3000万円特別控除)が認められるかどうかが争われた事例(平成28年3月16日裁決)
請求人は、譲渡した本件土地建物が、「居住の用に供している家屋」に該当する旨主張する。
しかしながら、本件家屋におけるガス及び水道の使用実績がなく、電気の使用量は極めて少ないこと、本件家屋の窓ガラスが割れたまま放置され、複数の近隣住民が人の住める建物ではなかったと評していること、また、請求人が住民票上の住所を本件家屋とは別の借家の所在地に置いていたこと、当該借家に係る賃貸借契約及びその更新の際に、請求人が同居人として名を連ねていたことなどからすれば、請求人が本件家屋を真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の本拠としていたとは認められない。
以上によれば、本件家屋は、請求人の「居住の用に供している家屋」に該当しない。
3000万円特別控除の対象となる家屋は、「真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の本拠としていること」が必要とされています。
これは、当該譲渡者及び家族の日常生活の状況やその家屋の利用の実態、その家屋の入居目的、その家屋の構造及び設備の状況等の諸事情を総合的に考慮し、社会通念に従って判断されます。
本裁決では認められませんでしたが、裁決の要旨にも触れられているように、水道光熱費の利用状況、家屋の保存状況、別の場所に住民票が置いてあることについての合理的な説明が可能な場合、住民票が置かれていない土地家屋についても居住用の特例の適用が可能な場合があります。
我々も、過去にこのようなケースで居住用の特例の申告を行い、認められた事例が多数ありますので、気になる事例等がありましたら、お気軽にご相談下さい。
なお、親名義の土地家屋に長期間住んでいる子が、親から相続時精算課税制度等で土地建物の贈与を受けた上で譲渡を行い、居住用の特例を受けたいというご質問を時々いただきます。以前は認められていたスキームですが、最近、国税不服審判所の裁決で、譲渡することを前提に贈与した場合、居住用の特例を認めないという事例が出ております。
直前贈与→即売却のケースについても注意が必要です。
このコラムの著者 石井 力(いしい ちから)
税理士:石井 力(いしい ちから)
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